今回のあましんさん
古門 勇亮さん(渉外係 2017年入庫)
ぶらり昭和町・天王寺
万博を間近に控えたウォーターフロント、
さらにはお膝元の文の里商店街まで。
昭和町支店が受け持つエリアは表情豊か。
そこかしこに散らばる街の個性を探して、
上町台地を北へ南へ訪ね歩いた。
「天王寺から南のことは知らなくて」。
大阪出身の取材クルーの口から、あまりに率直な声が漏れました。
でも、そんなことではもったいない。
見慣れた街から少し足を延ばせば、過去と現在、そして未来が入り混じる
すてきな出会いがありました。
※掲載している情報は2023年2月現在のものです。
営業時間・料金等が変更になる場合があります。
01うどんや風一夜薬本舗
- 大阪市東住吉区山坂1-11-2
- 0120-12-1893
- 10:00~17:00
- 土曜・日曜・祝日休
かつてうどん店に掲げられた看板は木製が主流だが、豊臣期大坂城の発掘調査中には昭和初期のホーロー看板が出土。その頑丈さが幸いして90年越しの里帰りが実現した。
掘れば掘るだけ物語が!
薬の老舗はエピソードの宝庫
「うどんや」を冠しながら、うどん屋にあらず―その正体は、明治初期から5代にわたり続く老舗製薬会社だ。屋号にあるうどんや風一夜薬とは「温かい汁物をすすってかぜ薬を飲めば、薬効が高まる」との漢方書の記述に着想を得て、うどん店に販路を求めたかぜ薬。法改正でうどん店からは姿を消すも、戦前には全国シェアの8割を占める時期もあった。メディア露出も多いが、いまも「年に数度はうどん屋さんと勘違いされる方がいて」と、取締役の末廣美帆さんは恐縮しきり。謙虚な姿勢を貫くことが、ロングセラーの秘訣なのかも。
02酒宴 菜乃庵
- 大阪市天王寺区茶臼山町2-23
- 06-6770-5757
- 11:30~14:00 / 17:00~22:00
- 17:00~21:00(日)
- 月曜休
ターミナルの喧騒を離れた慶沢園そばに、大正期に建てられた古民家がひっそりと。内外装ともほとんど手を入れていないそうで、年配客からは「懐かしい」の声も。
カジュアルな古民家酒場で
畑のおかずと厳選酒をどうぞ
ランチの看板メニューは、一汁八菜 農家のお昼ごはん1280円。淡路島の農家から直接仕入れる野菜を主役に、和洋がクロスオーバーした日替わりの献立が味わえる。色とりどりのおかずは目にも楽しく、女性人気の高さにも納得だ。打って変わって日が暮れると、気軽な日本酒酒場に。お酒好きだという女将・内野晴佳さんによるセレクトは、フルーティなもの、くせの強いもの、果てはラベルがおもしろいものというように細かく分類されており、日本酒ビギナーにもうれしい。常時約40銘柄もの豊富な顔ぶれから、お気に入りを探してみては。
03四天王寺はやうち
- 大阪市天王寺区四天王寺1-12-16
- 06-6773-2858
- 11:30~15:00
- 17:30~21:00
- 水曜休・月火夜休
高校卒業後、親戚が経営する出石そば店を手伝ううち、自然とこの道に入ったという早内さんはキャリア30年超。「同じ生産者でも畑によって風味が変わります」。
そばが持つ個性を追い求めて
参道沿いで出会った“求道者”
四天王寺参道に面する店の木戸を引けば、ふくよかなだしの香りがふわり。さるグルメガイドに掲載されるほどの実力店のこだわりは、北陸を中心としたそばの産地まで足を運ぶことだ。厳選されたそばの実は手早い下処理を経て真空保存、個々の特性を見極めてその日出すべきものだけを提供する。店主の早内俊二さんが「誰もがおいしいと感じるそばを」と語る通り、歯触りはあくまでなめらか。せいろに添えられたとろみのある汁は、麺によくからんで風味を引き立てる。研究熱心な職人の心尽くしは、細部に至るまで抜かりがないのだ。
04THE MARKET
- 大阪市阿倍野区阿倍野元町6-25
- 7:30~22:00
- 無休
小麦粉と水だけでつくった酵母を用いるサワードウは、加藤さんが独学でレシピを構築。カナダに友人を訪ねた際に出会い、素朴ながら力強い味わいに惚れ込んだそう。
地元にあふれる魅力を伝える
食の“ローカルメディア”
レストランにベーカリーカフェ、さらには無農薬野菜やエスニック料理のポップアップまで。阪堺電車の停留所からすぐ、昭和40年代に建てられた商業施設をリノベーションしたTHE MARKETは、実に多彩な顔を持つ。仕掛け人の都市計画家の加藤寛之さんによれば「ご近所のすてきな店や人の存在に目を向けるきっかけにしたくて」とのこと。なるほど、確かに商業集積地ほどナショナルチェーンが割拠し、かえって街の個性が見えづらいかも。全国各地で街づくりに取り組んできた加藤さんの語りに、「ご近所経済」の可能性を見た。
05BOSTON 昭和町本店
- 大阪市阿倍野区阪南町1-50-4
- 06-6625-0050
- 11:30~15:00(14:30LO)
- 17:30~22:00(21:30LO)
- 無休
昭和町に生まれ育った溝黒さんは「街に育ててもらった」と感謝しきり。大阪ヨーグルトケーキが目玉の洋菓子事業は兄が引き継ぎ、兄弟で恩返しを誓っている。
伝統の味わいをアップデート!
下町代表が大阪代表に
大阪でハンバーグといえば、少なからぬ人がその名を挙げるだろうが、「ハンバーグのボストン」の歴史は意外と浅い。2006年、30歳にして家業を継いだ3代目・溝黒省次さんが、文の里商店街で愛されてきた老舗洋食店を当時は珍しかったというハンバーグ専門店に衣替えしたのだ。気をてらわないたたずまい、ふっくらした焼き上がりは変わらない一方で、専業化は技の継承をより確かにし、のちの多店舗展開を可能にした。しかし、溝黒さんは「ここからは手を広げず、質を上げていきたい」ときっぱり。下町のハンバーグはブレない。
06マック体操クラブ
阿倍野教室
- 大阪市阿倍野区
昭和町3-1-64 - 06-6621-0801
驚くなかれ、「MAC」の「M」は「桃山」の頭文字。桃山学院の文化事業としてスタートして1973年に独立、現在の本部も桃山学院中学校高等学校に隣接する。
「儲かれへんで」から名門へ
体操教室ベンチャーの現在地
長い歴史をひも解けば、池谷幸雄、冨田洋之といったオリンピアンの名前も。まだ体操教室が一般的ではなかった半世紀前の創業期、周囲からは「儲かれへんで」との声も上がったが、いまや府内に10の教室を数える規模になった。先見の明のあった初代から経営を引き継いだ見原隼さんは、人と接する仕事がしたいとの熱意で商社を退職、アルバイトから社長にまで登り詰めた経歴の持ち主。「運動ができない子はいないんです。苦手なこともいかに楽しみに変えられるか」との言葉は、子どもたちの笑顔を見ればいっそうの説得力を帯びた。
聖徳太子の昔から栄えた一帯に、
歴史を重んじながらも
新たな可能性を探る人がいる。
街に根づこうとする人がいる。
これもきっと偶然じゃないはずだ。
一人ひとりのいきいきした表情に、
そんなことを思う1日でした。