今回のあましんさん
紀井 健太郎さん(浜甲子園支店 次長 2000年入庫)
ぶらり
甲子園・鳴尾
シーズンオフの聖地周辺はやっぱり静か。
だけど、熱狂が落ち着くいまだからこそ、
この街の“平熱”を感じられるとも思う。
球春到来を待たず、出かけることにした。
甲子園で沿線開発が始まって
ほぼ100年。
近年に入って再開発が相次ぎ、
一帯はがらりと表情を変えました。
球場に続く道も美しく整備され、ずいぶん シュッとした 印象。
今回はお隣の鳴尾にも足を延ばして、街の魅力を探ってきました。
※掲載している情報は2022年12月現在のものです。
営業時間・料金等が変更になる場合があります。
01ビート魂ショップ
- 西宮市甲子園町7-6
- 1階店舗ビートデザイン
- 0798-77-5254
- 11:00〜17:00(プロ野球や高校野球の試合日は変更あり)
- 月曜休
智弁和歌山から甲子園に出場し、日本ハムに進んだ細川凌平選手は小学生のころから常連客。「成長を見届けられるのは何よりの喜び」と松田さんは目を細める。
こだわり派の虎党も大満足!
差がつく野球グッズ専門店
野球観戦に訪れた甲子園で、個性豊かにカスタマイズされたユニフォームに身を包む「こだわり派」を目撃した人は多いだろう。オリジナルワッペンの圧着サービスで彼らの心をつかむのが、23号門からすぐのビート魂ショップだ。店主でデザイナーの松田武さんは、会社員時代にオリックスのチームウェアを手がけたことを機にこの世界に身を投じ、少年野球に関わる父母の愚痴をコミカルに描いたTシャツ、甲子園をもじったブランド「5040」などを考案。ライトスタンドの向こう側にも、広い守備範囲を誇るバイプレーヤーがいる。
02カバのおしり。
- 西宮市上甲子園1-4-1
- 9:00〜19:00 水曜休
2022年10月のオープンから日は浅いが、すでにリピーター多数。余計なものは加えず、台湾の家庭で親しまれる優しい甘さとなめらかな口溶けを忠実に再現する。
街おこしのヒーローと
台湾スイーツの“口福”な関係
「まさか自分がコック帽をかぶるとは」と苦笑するのは山﨑哲さん。ご当地唐揚げとして有名な甲子園ヒーロー揚げの仕掛け人は、台湾での催事出店をきっかけに食による国際交流を考えるようになったという。当初は現地に店を開く計画も、コロナ禍で立ち消えに。そこで発想を変え、海の向こうの友人から伝統的なレシピを教わって、まったくのゼロから台湾カステラの店をオープンさせたのだ。ちなみに「ヒーロー」の語源は中国語の「鶏肉(ジーロウ)」だとする説も。意外なように思えて、確かな縁に吸い寄せられていた説を推したい。
03串かつ まるまん
- 西宮市鳴尾町3-4-10
- 0798-41-1923
- 17:00〜22:30(22:00LO)
- 水曜休
定番品でありながら他店ではなかなか見かけないブロッコリーは、野菜が苦手な子どもからも「これなら食べられる」と好評。昼の定食は700円〜とお得に楽しめる。
甲子園の“大先輩”の店で
アイデア満載の創作串カツを
常時50種類以上の串カツがスタンバイするなかには、カレーピラフ、だし巻き玉子といった創作串がずらり。「起用法」が悩ましいところだが、油にこだわったカラッとした仕上がりで胸焼けの心配は無用だ。実はこの店、夏の甲子園名物・かちわり氷を販売する梶本商店が運営。創業は阪神本線が開業する前年の1904年(明治37)と古く、甲子園から見れば20年も先輩だ。うどん、寿司、果ては球場でのざぶとんレンタルと、周辺の沿線開発とともに多彩な商いを展開してきた伝統は、手広いメニューにもしっかり根を下ろしている。
04やっこ旅館
- 西宮市甲子園七番町5-19
- 0798-41-0733
「組み合わせ抽選の日は後半日程を期待してしまう」というのが、いかにも球児の宿らしい。その立地から、過去には阪神球団が合宿所を置いたこともあるそう。
鹿児島代表を長年サポート
聖地最寄りの球児の宿
甲子園から徒歩5分ほど、高校野球の鹿児島代表が常宿に使う老舗旅館。2022年秋のドラフトでソフトバンクに指名された大野稼頭央投手もここで寝泊まりした。ロビーの一角には歴代出場校の記念品が展示され、ギャラリーさながらだ。気取らないサービスとおいしい食事で熱闘を支えてきた歩みそのものだが、主人の芳本典夫さんには気になる変化も。かつて1日10升もの米を炊いていたのが、近年は明らかに球児の食べる量が減っているという。「因果関係はともかく、成績も一緒に下降気味で残念」と芳本さん。薩摩球児よ、メシを食え!
05鳴尾化学研究所
- 西宮市浜甲子園2-13-18
- 0798-41-0392
中村社長の20年来の趣味はハワイアンアートの収集。自宅に展示スペースを捻出しきれなくなった結果、甲子園浜の事務所にはワイキキの風が吹き抜けている。
変化をいとわず急成長
敏腕社長には意外な趣味が?
創業から70年以上の歴史を重ねる業務用ヘアケア用品メーカー。自社のバラ園で育てたダマスクローズを配合したり、洗髪台を使わずに髪が洗えるシャンプーを生み出したりと、意欲的な商品開発を通じてプロの要求に応えてきた。ここ15年ほどの間に経営の軸をOEM生産に移したところ、わずか8人の所帯ながら年商は10億円を上回るように。月の半分は出張で全国を飛び回る3代目の中村豊樹社長は、スピーディな提案力に自信をのぞかせる。いつものサロンで私たちを癒してくれているのは、西宮の「地シャンプー」かもしれない。
06トリーエンジニアリング
- 西宮市鳴尾浜1-6-44
- 0798-39-7301
阪神鳴尾浜球場の移転は2年後に迫ったが、こちらは鳴尾浜に引っ越してまだ2年目。「産業史に名を残したい」と語る古堤裕行社長が、若虎に代わって爪を研ぐ。
オーダーメードの製品開発で
産業界の“困った”を解決
宇宙開発用ロボット、衣類の自動ボタン付け装置、納豆菌乾燥装置 ― これらはいずれもトリーエンジニアリングが手がけた産業機器。あまりに広範な開発領域に驚くが、それも産業界の困りごと解決というモットーゆえだ。なかでも得意とするのは空圧技術。独自構造を採用した工業用エアノズル・Hayateは、消費電力を大幅に抑えつつ従来品に勝る高風速を実現した。大手飲料メーカーの工場で製品表面の水滴除去に用いられるなど、名だたる巨大企業が導入しているが、対する同社はたった3人の少数精鋭。すごい会社があるものだ。
甲子園をしのぐ老舗から、
期待の若手 まで。
さまざまな出会いを通して、
聖地とともにある街の
また違った一面が見えました。
球場へ一直線ではもったいない。
そんな気がした街歩きでした。