今回のあましんさん
泉谷 知香さん(大国町支店 渉外係 2012年入庫)
ぶらり大国町紀行
大国町界隈(Osaka Metro大国町駅)
大国町で主役を張るのは、商人と職人だ。
江戸の昔から変わらないもの、都会の真ん中で変わっていくもの、
その両方を見てみたい。
御堂筋線と四つ橋線、赤と青とが交わるように、
交錯する街の表情を追いました。
Osaka Metro大国町駅の1号出口。
阪神高速の高架に向かって進めば、木津の市場がお出迎え。
大国交差点から西に進路を取ると、
そこは一転、ものづくりの街。
2つの異なる顔を持つ大国町へ、いざ「職場見学」に出かけます。
01大阪木津卸売市場
- 大阪市浪速区敷津東2-2-8
- 06-6631-1131
- 店舗による
(一般客は8:30~10:30 ごろがおすすめ) - 日曜・祝日休、水曜不定休
プロの料理人に親しまれるとともに、一般向けに小売も行う食の殿堂。高層マンションの建設が相次ぐ一帯にあって、変わらぬにぎわいを見せている。
長い伝統への誇りを胸に
浪速の食文化発信基地へ
「中央卸売市場が大型スーパーなら、我々のような地方卸売市場は専門店。地域密着でいかんと」。そう語るのは、大阪木津市場カンパニー長の藤山正道さん。「大手」と異なる色を出すべく、以前からイベント開催をはじめとした策を講じてきたが、目下の課題は府域で生産される農産物、水産物、加工品などで構成されるブランド「大阪産(もん)」の普及だという。
1810年、青物市場として公許を得た際、販売を認められた13品の野菜は、いずれも現在の大阪産の原種にあたるはずと藤山さんは推理。いまでこそ採算性の問題から少量生産に留まり、一般市場に流通しづらい弱点があるが、小回りの利く木津市場ならウェブをからめた施策も打ちやすく、潮目を変える役割を担えると踏む。地域の人が足元の特産品を誇り、地域の生産者にも還元される―伝統ある市場の「原点回帰」は、そんな未来へとつながるか。
02蛸仙
- 大阪市浪速区敷津東2-2-8 80 番
- 06-6632-5330
- 3:00~11:00
- 市場に準ずる
18歳でこの道に入り50年以上の神谷社長は、和洋さまざまな飲食店との縁も深い。とにかく朗らかな人柄で、レンズを向ければ「額縁入れてや」と絶好調だ。
主役級の鮮魚が目白押し
「浪速の水族館」にようこそ
看板商品である鯛の脇を固めるのは、スーパーではそうお目にかかれない「レアもの」だ。神谷章社長が「浪速の水族館」を自認する通り、この日の蛸仙には時鮭、ハタ、クエなどがずらり。主役を食わんばかりの豪華キャストに惹かれ、フレンチやイタリアンの料理人も足繁くやってくる。
「普段からいろいろな店に足を運んで、どんな魚がどう調理されているかチェックするのが楽しみなんよ」。商売人らしい「市場調査」は、何よりの仕入れ指針になるのだとか。
そうして、幸せな循環は続くのだろう。
03ヤマタ小林商店
- 大阪市浪速区敷津東2-2-8 19 番
- 06-6649-3663
- 5:00~12:00
- 市場に準ずる
さくらんぼ、マスカットなど、旬の果物が舌の肥えた客をうならせる。卸売はもちろん、近隣企業が詰め合わせギフトをオーダーするなど、裾野は広い。
「毎朝一年生」の目利きに
香港の人気者も舌鼓
香港の人気タレントがテレビ番組で取り上げたところ、インバウンド客が殺到したこともある青果専門店。小林弘和社長は当時の熱狂ぶりを「こっちまで店入られへんかった」と、苦笑まじりに振り返る。聞けば、自身のモットーは「毎朝一年生」。謙虚な口ぶりとは裏腹に、天候や季節によるコンディション変化を嗅ぎ分ける、鋭い感覚が備わっているのは想像に難くない。サラリーマン生活に区切りをつけ、3代目として店に立つ甥の兒玉佳さんにも、その嗅覚は脈々と受け継がれていくはずだ。
04鳥安〈大幸〉
- 大阪市浪速区敷津東2-2-8 114 番
- 06-6631-2960
- 4:00~11:00
- 市場に準ずる
新鮮な地鶏にこだわる店は、戦後ほどなくオープン。徹底した顧客志向が貫かれたサービスが受け、盆や暮れには北摂や泉州から足を運ぶ人もいるそうだ。
低価格にして低姿勢!
鶏のスターダム、木津にあり
近郊の丹波、但馬産を中心に、専門店らしくあらゆる部位の鶏肉をラインナップ。珍しいものでは鴨の首皮、ささみなども並ぶほか、親鶏は採卵を終えた成鶏、当初から肉用鶏として飼育された種鶏の双方を仕入れる徹底ぶりだ。「お客さんに使ってもらいやすいように、値段は極力抑えています」とは、水野正治社長。いやいや、値段だけではない。用途に応じた加工から配達までを引き受けており、飲食店からの信頼も厚いのだ。物腰柔らかで低姿勢な水野社長と相談しつつ、珍品に挑戦するのはいかが。
05西川商店
NISHIKAWA LEATHER(SHOP)
- 大阪市浪速区大国3-4-9
- 06-6649-0566
- 9:00~17:00
- 土曜・日曜・祝日休
これまで脈々と継承されてきた技術力が光る製品は、本社からすぐ近くの直営店で手に取れる。一生モノとの出会いを求め、ふらりと訪ねてみるのはいかが。
趣味人社長、南アフリカで
●●●をハンティング
爬虫類はもとより、象、カバ、果てはオットセイに至るまで― 世にも珍しいこれら「エキゾチックレザー」を専門に、1世紀もの歴史を重ねるのがここ、西川商店だ。熟練の技が必要な素材だけに「職人の腕、探究心が強み」と、アウトドア好きの西川晃正社長は胸を張る。
さて、そんな西川社長。ある年、取引のため訪れた南アフリカでオフロードトラック用の幌に出会ったそう。希少なレザーを求めて奥地に分け入るも武骨なファブリックに魅了され、ブランド化まで果たすのだから人生は分からない。
06太鼓正
- 大阪市浪速区塩草3-10-17
- 06-6561-0021
- 9:00~18:00
- 月曜・第2・4日曜・祝日休
環状線ユーザーなら一度は目にする太鼓メーカー。製造販売だけでなく、一般の見学も可能なショールーム、道場、YouTubeまで手がけるマルチプレーヤーだ。
環状線から視界良好
ランドマークで匠の技を目撃
大国町から西に足を延ばしたJR芦原橋駅周辺は、江戸時代から太鼓製造で全国に名を馳せた土地。南本庸介社長によれば、胴作り、革加工、革張りの全工程をこなせて初めて、一人前の職人と認められるそうだ。工房では、音のすべてを決める革張りを見学。リズミカルな響きに思わず聴き入るが、あくまで革を均等に伸ばすための「作業」だという。だが、祭りが盛んなエリア出身の職人が多いと聞き、妙に納得。DNAに刻み込まれたビート感が、見せる、聴かせる作業の礎になっているのだろう。
07エノキ屋酒店
- 大阪市浪速区大国1-11-2
- 06-6644-6363
- 17:00~22:30
(最終入店21:30、22:00LO) - 土曜・日曜・祝日休み
今宮高校の西向かいに位置する、立ち飲み併設の酒販店。酒造各社の貴重なノベルティを前に、女将から聞く初代の創業秘話はまるで1冊の絵本のようだ。
大国町の語り部を訪ね、
渋いのれんをくぐりたい
1916年の創業当初は芦原橋に店を構え、目の前にエノキの大木が立っていたことから、この店名に。うどん、果物、漬物などを商った末に、現在の形に落ち着いた。苦労人だった初代について、3代目女将・寺岡幸子さんは「ご縁を大切に、感謝を忘れないこと。見返りを求めず、何事もさせてもらう心で臨むこと。祖母からの一番の教えです」ときっぱり。そう聞くと、名物の鯛のタタキをはじめ、立ち飲みとは思えぬほどに凝ったアテの数々、そして心安い接客も、何やら合点がいく気にさせられた。
気さくな老舗にあふれていた、
大国町の街。
歴史を重んじながらも、
変えるべきところは変える。
当たり前のことのようだけど
その積み重ねを感じるからこそ、
より深く楽しめる1日になりました。