今回のあましんさん
西村 伊央さん(渉外係 2022年入庫)
ぶらり門戸・西宮北口
厄除けで名高い門戸厄神への乗り換え駅。
厄神さんのお膝元は閑静な住宅地でもあり、
阪神間随一の文教地区としての顔も持つ。
日々たくさんの人が行き交う2つの街を、
行きつ戻りつそぞろ歩くことにした。
かつてダイヤモンドクロスと呼ばれる
線路の平面交差があった、西宮北口。
駅を境に今津線が南北に
別れたいまも、
人と人とが交差するという意味では、
街のありようは変わらないものかも。
すぐお隣の門戸厄神にも
足を延ばして、
一帯の変化を探ってきました。
※掲載している情報は2024年7月現在のものです。営業時間・料金等が変更になる場合があります。
01 門戸厄神 東光寺
西宮市門戸西町2-26
0798-51-9090
9:00~17:00
令和元年にお目見えした厄神龍王の壁画は、新たな見どころ。約35メートルにおよぶ大作は、ファンタジーアートの巨匠内尾和正氏によるもので、厄神明王の眷属である龍が神秘的に描かれる。
厄除けのその先を見据えながら
地域とともに繁栄を願う
もはや説明不要、厄除けで高名な平安時代開山の古刹。県内はもちろん全国各地から参拝者を集めるが、住職の松田全弘さんによれば厄を取り除いた先にある開運、飛躍を願っているという。数ある仏の教えのなかでも特に重要視するのが「自利利他」の精神。自らの功徳を周囲にも広げる―そんな前向きな考えに根差し、さまざまな地域活動を展開するのも特色だろう。25年にわたり開催を続ける「であい市」、毎年8月19日に開かれる「厄神まつり」は、いずれも地元の人と連携してつくる催し。「厄神さん」の現在地は、門戸の広い集いの場だ。
02 門戸 Saziki
西宮市門戸西町3-3
0798-39-9866
11:00〜15:00(14:00 LO)
ディナーの営業はInstagramをチェック
月曜休
開放的なテラス席からは、山陽新幹線や大阪国際空港を発着する飛行機が一望のうちに。子どもたちはもちろんのこと、大人も童心に帰れるまたとないロケーションが自慢だ。
厄神さんの門前で味わえる
“七福”を体現したイタリアン
フレンチのキャリアを積んだシェフが繰り出すイタリアンのキモは、「七難即滅」「七福即生」の願いが込められたオリジナルブレンドの「七穀」。ライ麦、押し麦、もち麦、はと麦、アマニ、発芽玄米、小麦粉を豆乳で丹念に練ったもので、パスタとピッツァに力強い風味と独特の食感をもたらす。東光寺との協働で、小高い丘に建つ住宅をリノベーションした店内にはキッズスペースも設けられ、子ども連れでもゆっくりくつろげるのが◎。店名が表す通り、厄神さんの門前に出現した「桟敷席」は食の楽しみにとどまらない「福」を届けてくれる。
03 アントニオヨウフクテン
西宮市甲風園 1-4-3
0798-65-3155
12:00~20:00
火曜休
足で稼いだ逸品が6.5坪に凝縮
全国から支持を集める洋品店
わずか6.5坪の店にはカジュアルからフォーマルまで、よそではまずお目にかかれないブランドがずらり。代理店は通さず、オーナーの須々木正義さん自らヨーロッパ各地に出向いて目利きしたトラッドな品を求めて、全国から感度の高い客が集う。もとは東京のメディア業界にいた須々木さんだが、関西学院に通った学生時代にセレクトショップでアルバイトを経験したことが、今日のビジネスに身を投じる契機になったそう。「惚れたものは仕方ない」「買い付けはくせみたいなもの」という語りには、ファストファッションとは裏腹の懐の深さが感じ取れた。
04 DEN PLUS EGG
西宮市南昭和町 1-19
0798-61-3887
12:00~17:00
水曜休(火曜・木曜は要予約)
素材のよさを実直に突き詰め
本質的なアンティークを
経年美を活かした家づくり、アンティーク家具の販売を行うデザイン設計事務所。見せかけのレトロではなく、本当に質のよいものだけが歳月を経て醸し出す味わいをひたすらに追求し、リノベーションから新築まで年間約100軒もの施工を手がける。「あるものを大切に使いたい」と語るのは、代表の富田太洙さん。ただ古いだけではない家具、新しくても使い込むことで風合いを増す素材を自在に掛け合わせ、長く住み続けられる家を形づくる。アンティークをめざしつつも、その眼差しはあくまで未来志向。住まうことの本質を西宮から発信する。
05 cup of talk coffee
西宮市上大市 1-10-14
10:00~18:30
13:00~18:30(月曜)
第1火曜・第2月曜休
深み、酸味、香ばしさといった要素から、自分好みのコーヒーを選択。どの銘柄もハンドドリップで供されるので味が比較しやすく、すべてコンプリートするとうれしい特典も!
銘柄を伏せるがゆえに生まれる
コーヒーとの対話の時間を
大学生だった弱冠20歳で起業し、当初は学内でカフェを運営していた丸山いつ季さんが2021年、念願かなって地元・西宮にオープンさせた店。「あなたのコーヒー」をコンセプトに掲げ、10種類のコーヒーを気分や体調に合わせて選べるのが特徴だ。いずれもシングルオリジンだが銘柄はあえて伏せており、代わりにオリジナルのネーミングが記された「ビーンズレター」が手渡される。実はこれ、コーヒーに対する先入観をなくすための工夫。人懐っこい丸山さんとの会話のきっかけにもなるとあって、すでに根強いリピーターを獲得している。
06 LE66 PLATABLE
西宮市甲風園 1-6-11
0798-67-5315
11:30~16:00
18:00~23:00
水曜休
耳慣れない「PLATABLE」という言葉は、「Platform」と「Table」を組み合わせた造語。西北のもうひとつのプラットホームには「ヒト・コト・モノ」が集うテーブルがある。
素材にとことんこだわった
阪神間ガレット文化の旗手
西北でガレットといえばロクロク―今年10周年の節目を迎えたガレット専門店・LE66 PLATABLEは、フランスの田舎料理をこの地に根づかせるうえで大きな役割を果たしてきた。ガレットの味わいを左右するそば粉は、言わずと知れた芦屋の名店・土山人のものを使用。口に含めば豊かな香りが広がり、食べ進めるごとにさまざまな食感が楽しめる。パリの街並みをイメージしたというこじゃれた店内は、遅がけのバー利用にもぴったり。多彩なお酒とともに、手抜きのないヘルシーな味覚をじっくりと噛み締めてみるのもいいだろう。
07 大市米穀酒販店
西宮市門戸荘 17-53
0798-51-1050
10:00~19:00
日曜休
客の好みに応じてその場で玄米を精米するだけでなく、業界でも珍しい色彩選別機を駆使。異物や着色粒を取り除き、文字通り混じりけのないきれいでおいしい米を提供する。
“きれいな米”を1キロから販売
厄神さんとも縁深い門前の老舗
無農薬米、特別栽培米などを独自に仕入れ、1キロから販売する米の専門店。店頭には常時17~18品種が並び、宝塚や芦屋方面からも引き合いがあるほどだ。なかでも大粒で粘りの強い岐阜県産「龍の瞳」は、さるテレビ番組で大物タレントが太鼓判を押した。ちなみに店のルーツは戦前の配給所。厄神さんとの結びつきも強く、震災復興を機に始まった「であい市」では、商店街と寺を仲立ちした。さらには祈祷米の「厄神米」、辰馬本家酒造と共同開発した特別純米酒「厄神」も販売するが、これらは冬季限定。しばしの間、楽しみにしておこう。
厄神さんが見守る街では、
多様な文化が交錯していました。
自らの意思を貫く人の存在が、
また別の誰かの幸福をつくる。
”自利利他”の意図せぬ実践が
そこここに見受けられる、
そんな街歩きになりました。