今回のあましんさん
吉野 祐介さん(副支店長 2002年入庫)
ぶらり立花
“アマ”の印象を一変させたターミナル。
でも、そのすぐ西隣に位置する立花には、
いまも変わらぬ“アマ情緒”が息づく。
往時の活気と個性はそのままに、
時代の波にうまく乗る街を訪ね歩いた。
JR尼崎駅から神戸方面へたった1駅。
アーケード街が 現役の立花には、
どこか懐かしい雰囲気が漂います。
再開発も著しいお隣さんをよそに、
個人店が肩を寄せ合う一帯は、
ただ歩くだけでも元気をもらえそう。
懐の深い街の表情をレポートします。
※掲載している情報は2024年2月現在のものです。営業時間・料金等が変更になる場合があります。
01兵庫ペット医療センター
- 尼崎市立花町3-1-5
- 06-6428-2565
- 10:00~19:00(電話受付)
- 19:00~22:30(夜間診療)
- 無休
有里家畜医院として開院した当時の写真には「犬」の横に「牛」の文字が。高度成長前夜の尼崎にはまだ牧場が目立ち、家庭で飲まれる牛乳の多くが「地産地消」だった名残だ。
遠方からも“患者”が訪れる
ペットのための“基幹病院”
動物病院、トリミングサロン等の機能を有する「基幹病院」には、県内はもとより滋賀や遠くは四国から、年間のべ3万頭以上もの「患者」が訪れる。所属する獣医師は25名、犬と猫に特化した動物病院としては国内屈指の規模だ。さまざまな症例の蓄積は適切な処置につながるそうで、時としてトリミング中に皮膚病を早期発見、大事に至らず済むケースもあるという。「命を預かる以上は最高の医療を」と話すのは、父の開いた病院を大きく飛躍させた有里正夫さん。大切な「家族」たちに向け、温かい眼差しを送り続ける。
02お好み焼き ノルド
- 尼崎市七松町1-9-3
- 06-6416-4690
- 11:00~15:00
- 17:00〜21:00
- 火曜休
さるYouTubeチャンネルで400万回を超える再生数を叩き出すなど、その評判は立花から世界へ。楕円形が特徴の鉄板も50年選手で、店の独自性を演出する名脇役だ。
洋食の技に裏打ちされた
唯一無二の“ノルド風”で魅了!
お好み焼きが外食のいちジャンルとして認知されつつあった昭和40年代前半、洋食店で修行を積んだ田中善一郎さんが創業。ふわふわ食感をケチャップとマスタードが引き立てるお好み焼きは、大阪風とも広島風とも違う正真正銘の「ノルド風」だ。「前かけをつけると仕事モードになる」と、半世紀以上のキャリアを経てなお現役バリバリの善一郎さんのかたわらでは、2代目の正浩さん、三苗さん夫妻が奮闘。客の声から生まれたネギライス1100円に代表される新メニュー、アテの充実などにより使い勝手のいい店へアップデートを繰り返している。
03御菓子司 旭堂本店
- 尼崎市立花1-5-11
- 9:00~19:30
- 木曜休
お年寄りからファミリー層まで
多世代が交差する和菓子店
戦後ほどなく商いを始めた店は、おはぎに代表される生菓子がウリ。長く店に通う年配層が目立つが、ここ数年で近隣に高層マンションができた影響から、子育て世代も訪れるようになった。さらには市内の若者との交流にも積極的。園田学園女子大学の学生と共同開発した橘の玉依姫135円は、クリームチーズに生醤油を組み合わせたアイデア商品で、大先輩にあたる近松もなかに肩を並べる新定番になっている。店主の久保田昌宏さんは「学生の意見を形にするのに苦労しました」と頭をかくが、そうした姿勢こそが愛され続ける秘訣なのだろう。
04ケーキ工房Watanabe
- 尼崎市立花町1-6-10
- 06-6427-8188
- 10:00~19:30
- 木曜休(日曜不定休)
“福井×立花”で生み出す
健康志向の洋菓子をどうぞ
福井出身の店主・渡辺聖児さんが、生粋の尼っ子である妻との結婚を機に立花にオープン。「体に優しい洋菓子を」との思いから、福井県産の豆腐を使った多彩なスイーツを生み出し、話題を呼んでいる。なかでもロールケーキ・王様のまくら530円は、生地とクリームの両方に豆腐を練り込んだ意欲作。くせのない素直な味わいが広く支持されている。一方では市の「尼みやげ」にも数えられる立花のレモン娘270円のように、立花色を押し出した商品も。地野菜の尼いもを使ったスイーツも鋭意開発中といい、今後が楽しみな存在だ。
05白い虹 安心堂
- 尼崎市立花町2-1-24
- 06-6429-2208
- 10:00~18:00(売り切れ次第終了)
- 木曜・日曜休
立花商店街のアーケードからも目を引く「ハイテクとうふ」と冠された看板。珍フレーズかに思えるが、伝統を踏まえつつも時代に即した商品をとの情熱が込められている。
“ハイテク”の看板に偽りなし
進化を止めない豆腐の老舗
あそこの豆乳で鍋をすれば、無限に湯葉ができる―そんな評判もあるという立花の名物店。国産大豆と天然にがりのみを用い、その名の通り安心できる豆腐を作り続ける金谷博貴さんは、この道半世紀近くの大ベテランだ。どれだけ時代が進んでも手間ひまを惜しまぬ製法を貫く一方で、酒豆チーズや豆腐スイーツといったアイデア商品も。目ざとい百貨店のバイヤーにより「立花代表」として海外進出も果たしている。さておき、安心堂はともかく「白い虹」の意味するところとは。その秘密を確かめるべく、昔気質の職人のもとを訪ねてみては?
06麦工房 きむらや
- 尼崎市立花町1-16-16
- 06-6426-8005
- 8:15~19:00
- 無休(お盆・正月休)
立花に店を移してよかったことを問えば「お客さんと一対一でやりとりできること」と福田さん。下町らしいコミュニケーションが、旺盛な商品開発の原動力なのかも。
仁川で創業して間もなく1世紀
街との対話で立花に根づく
昭和初頭に仁川で創業し、阪神・淡路大震災やいくたびかの移転を経て、7年前に立花商店街へ。店構えこそ新しいが、ほどなく100周年の節目を迎える正真正銘の老舗ベーカリーだ。年間3000本も売り上げる角食はふわふわの食感がやみつきで、毎週決まって買い求める人も。かたや3代目の福田学さんは「同じものばかり作っていると、お客さんだけじゃなく自分たちも飽きちゃうから」と頻繁に新作を投入、定番品の人気に甘んじる様子は微塵もない。商店街を行き交う人を見通せる工房から、今日も飽きの来ない味わいを届け続ける。
07焙煎工房マルイ
- 尼崎市立花町1-15-1
- 06-6429-6336
- 9:00~15:00
- 木曜・日曜・祝日・年始休
なんと、もとは紅茶派だったという土井さんの春のおすすめは、フルーティな味わいのブラジル産「さくらブルボン」。希少種ゆえ、在庫があるかは訪ねてみてのお楽しみ。
高速焙煎と鮮度がウリの
相談できる街のロースター
ドアを開けた瞬間にふわり漂う焙煎香。鮮度自慢のコーヒー豆は常時50種類以上揃い、圧巻のひと言だ。注文から3~4分の高速焙煎と100グラムからの少量販売という合わせ技は、あれもこれも試したいという尼っ子の心を鷲づかみに。ロースターと聞くとハードルが高そうに思う向きもあろうが、焙 煎度合いやおすすめの抽出法などコーヒーのあれこれを気軽に相談できるとあって、自分好みの一杯を探し出すにはもってこい。店主の土井祥司さんは「立花の人はいいものを知っているから気が抜けない」と微笑みつつ、地元愛を語ってみせた。
08ハリマ堂化粧品店
- 尼崎市立花町2-1-21
- 06-6429-3941
- 10:00~19:30
- 日曜休
コロナ禍も落ち着き、マスクを外す機会が多くなったことで「これまでの化粧品が合わなくなった」との声が多数。その道のスペシャリストに話を聞いてみるのもよさそうだ。
“自己流”ではたどり着けない
本当のケアのあり方を伝える
「やっぱり人ありき、付加価値ありきだと思うんです」。量販店やドラッグストアで手軽に化粧品が入手できる時代に、街の化粧品店が果たすべき役割を語るのは、ハリマ堂化粧品店の3代目・小谷健二さんだ。ここでいう付加価値とは、入念なカウンセリングのできるスタッフの存在だろう。年齢や季節に応じ変化する肌の状態を客観視してもらい、本当に必要なケアを知ることの意味は少なくない。「同じ品でも使い方次第で仕上がりがぐっと変わるんです」。大手化粧品メーカーで営業を経験した小谷さんの言葉には、飾り気のない説得力があった。
街が新陳代謝をしようとも、
揺らがぬ芯のようなものがある。
目新しい高層マンションの間に、
街の“らしさ“を見て取れる。
都心回帰の流れのすぐそばで、
立花は立花であり続けるだろう。
そんな思いを新たにしました。