今回のあましんさん
平野 将史さん(芦屋支店 渉外係 2015年入庫)
ぶらり芦屋
その街を形容する言葉はさまざまあれど、
“芦屋”の2文字に勝る表現はないだろう。
確固たるブランド力は一方で、
印象論ばかりを先走りさせているような。
“別格の街”の懐へ、するりと飛び込んだ。
阪神間の多くの街が
そうであるように、
海側から山手へ表情を変える
芦屋の街。
昔からこの場所に親しむ人。
その風土に憧れて
新たにやってきた人。
一人ひとりと顔を突き合わせれば、
画一的なイメージとはまた違う、
より豊かな 芦屋像 が見えてきました。
※掲載している情報は2023年8月現在のものです。
営業時間・料金等が変更になる場合があります。
01リストランテ
ラッフィナート
- 芦屋市船戸町5-24
- 0797-35-3444
- 11:00〜13:00LO
- 12:00〜13:00LO(土日祝)
- 18:00〜20:30LO
- 不定休
全席個室、あえて無機質にした内装が、記憶に残る味を彩る舞台装置に。目の前の会話に集中できることから、イタリアンには縁遠かった男性のビジネス利用も目立つ。
引き算の美学が生み出した
芦屋が誇る人気イタリアン
芦屋の地に産声を上げて20年近く。リストランテをはじめ、トラットリア、バールなど、イタリアの食文化に根ざした多様な業態の店が並ぶ駅チカエリアは、さながら「ラッフィナート村」の様相だ。シェフの小阪歩武さんのこだわりは、余計な技巧に走らず素材の持ち味を引き出すこと。皿の構成要素をしぼり込んだ直球勝負が、本物志向の強い芦屋の地域性にマッチした。多忙な合間を縫って、週に1度はライフワークのサーフィンに出かけるという小阪さん。心をフラットにして波に向き合う時間が、人気シェフの感性をさらに研ぎ澄ます。
02六甲味噌製造所
- 芦屋市楠町11-16
- 0797-32-6111
- 9:00〜12:00
- 13:00〜17:00
- 13:00〜16:00(土)
- 日曜・祝日休
3代目社長の長谷川憲司さんは、味噌を引き合いに経済から国際情勢までを語る博識ぶり。そのことに水を向けると「僕は薄識やから」とユーモアを交えて謙遜していた。
品のある味わいの向こうに
上方の豊かな食文化を再発見
阪神間の醸造文化と聞いて、真っ先に思い浮かぶのは灘五郷か。しかし、かつては味噌づくりも盛んな土地だった。食の欧米化に伴い味噌蔵の多くは姿を消すも、ここ六甲味噌製造所への支持はいまも根強い。角のないまろやかな味わいは、水運に利のある上方の土地柄ゆえ。瀬戸内経由で集まる新鮮な食材を活かすべく塩の使用は極力控えられ、結果として職人が手間暇惜しまず作った糀の香りが際立つのだ。近年は大豆、米、塩のすべてが兵庫県産という商品も登場。味噌汁は言わずもがな、つける、和えるなど多彩な楽しみ方で、その実力を確かめてみたい。
03シェ・モリ
- 芦屋市楠町 7-16
- 0797-23-6464
- 12:00〜14:00LO
- 18:00〜20:00LO
- 水曜休
森澤さんは地元・福知山から裸一貫で大阪に飛び出し、4畳半の部屋に暮らしつつ財界人集う名店で研鑽を重ねた。特にビゴの店で学んだ和洋折衷の発想は、生涯の財産という。
苦労人シェフを突き動かすのは
芦屋という街への恩返しの思い
阪神間の大動脈である国道2号線沿い、控えめにトリコロールがあしらわれたモダンな建物が、ベテランシェフ・森澤武治さんの城だ。顔の見える生産者から仕入れた旬の食材と向き合い、フレンチの型にとらわれない最良の調理法で客のもとに届けるのが身上。半世紀近いキャリアを振り返るなかでは、周囲への感謝が繰り返し強調された。独立時にこっそり店に通って支えてくれた大家、自らの技を継承する後進、そして芦屋の人々。「それなりの対価をいただくぶん、分け隔てなくもてなしたい」と語る口ぶりに、謙虚な人となりを感じた。
04
ポッシュ・ドゥ・レーヴ
芦屋
- 芦屋市公光町9-7 モントルービル101
- 0797-32-0302
- 11:00〜18:00
- 月曜休(焼き菓子は日〜水、生菓子は木〜土のみ販売)
秋の訪れを告げるのは、大ぶりの丹波栗をごろっと使ったパウンドケーキとモンブラン。首都圏に流れがちな入手困難品を確保して、感度の高い地元ニーズに応える。
夫婦二人三脚で切り拓いた
価値ある“新鮮焼き菓子”
賞味期限は長いものでも2週間。鮮度自慢の焼き菓子というのが、なんとも芦屋らしい。催事出店などはせず、地元での商いに徹するのも繊細な風味を届けたいがためだ。結婚・出産を経た女性が働き続けるのが難しいとされる業界にあって、シェフの伊東福子さんは変わらずお菓子づくりに専念。経営面から支える夫の巌さんは「小ぶりなサイズの商品が多いところに、少しずついろいろなものを楽しみたい女性の感性が表れている」と頼もしげに話す。夫婦二人三脚で新たなロールモデルを提示するのも、この店に課せられた大切なミッションだ。
05コニシステム
- 芦屋市茶屋之町3-2 3F
- 0797-38-5245
コニシステムの原型が生まれたのは、小西さんが学生時代を過ごした東京。華やかな六本木の社交界で始めた風船の移動販売が好評を博し、イベント会社勤務を経て起業した。
地元・芦屋を拠点に日本全国へ
夢のある瞬間をプロデュース
海外ドラマを彩るパーティの描写に憧れた少年が、のちに生業にしたのは風船飛ばしだった―このエピソードがすでに物語性を帯びているのが心憎い。イベント企画会社・コニシステムを率いる小西雅さんは、精道小学校に学んだ生粋の芦屋っ子。環境や安全性など意外に制約の多い風船飛ばしを事業化し、全国各地のイベントや学校行事に花を添える。形に残るものを手がけたいと、コロナ禍に開発した足踏み式のスタンプ台・フミポンは、スタンプラリーなどに引っ張りだこ。地方に眠るコンテンツの掘り起こしこそ、小西さんの目下の夢だ。
06エソラワークス
- 芦屋市奥池南町21-6
- 0797-20-1768
標高約500メートル、芦屋の避暑地にある工房は小鳥がさえずる静かな環境。製作に疲れたときは自作のウッドデッキでひと休みして、無邪気な想像力に向き合っている。
子どもの想像力を形にした
世界でたったひとつの宝物を
六甲の山間にひっそりたたずむ工房で生まれるのは、子どもの落書きを形にしたぬいぐるみ。代表の白石哲一さんが、幼い娘の落書きをもとに慣れないミシンを走らせたことを機に生まれたビジネスは、仕事の枠に収まらない。平面の落書きを立体化するだけに、オリジナリティを尊重しつつ側面や裏面を補う「共同作業」をウリにするが、創業10年を経てもなお発送時はドキドキするとのこと。とはいえ、それも2つとして同じものがなく、常に新鮮な気持ちでいられることの証明であろうことは、白石さんの優しい眼差しが何より物語っていた。
土地が人をつくり、技をつくる。
自分の足で歩いた芦屋の街は、
これまでの印象に言葉をくれた。
“芦屋的なもの“への期待が、
そこに応えようとする責任感が、
“芦屋的な価値“を創造する。
そう強く確信する街歩きでした。