今回のあましんさん
午房 祐希さん(渉外係 2017年入庫)
ぶらり武庫之荘
武庫之荘という地名を聞いて、
そんな印象を抱く人は少なくないはず。
でも、実際のところはどうなんだ。
阪急神戸線の線路を何度もまたいで、
“こじゃれた街”の日常を見てきた。
阪急電鉄の宅地開発により、
1930年代後半から栄えた武庫之荘。
駅北口のロータリー、
南口の並木道は、
もうひとつの尼崎を印象づけます。
いまもモダンな
面影をたたえる街には、
どんな人たちが日々を過ごし、
物語をつむいでいるのでしょうか。
※掲載している情報は2023年5月現在のものです。
営業時間・料金等が変更になる場合があります。
01洋菓子店 リビエール
- 尼崎市南武庫之荘3-34-6
- 06-6438-6433
- 平日(火曜休)
- 10:00〜18:00
- 土日祝
- 10:00〜12:45
- 14:00〜18:00
アンティーク感のある猫缶のモデルは、西さん親子の仲睦まじい家族写真。長らく親しまれてきたが、このほどリニューアルを控えているそう。新しいデザインにも注目したい。
“武庫之荘ブランド”の
ラングドシャが全国区の人気
バニラシュガーがふわりと香るラングドシャ3450円が名物で、その人気はもはや全国区。3月には東京・世田谷に2号店をオープンさせた。2代目の西剛紀さんによれば、大量生産の規格品では割れが生じるリスクから、これほど薄いラングドシャはつくれないとのこと。手仕事ゆえの強みを活かして、よそでは出せない歯触り、口どけのよさを実現しているのだ。テイクアウトはもちろん、店の一角ではカフェ営業も。妻の理美さんのセンスでまとめたパッケージや内装のゆったりした空間で、お菓子と各種フレーバーティーなどとのカップリングを楽しめる。
02広島風お好み焼き
ゆうか
- 尼崎市南武庫之荘1-15-7
- 06-4962-1666
- 17:00〜翌0:30LO
- 月曜休(月曜が祭日の場合は翌日)
コテは32年にわたり使い続けているといい、まさに戦友。角が取れて丸くなった商売道具は円熟味を帯びる職人の姿そのもので、手際よい仕事ぶりを見るのも楽しい。
この道30年以上の職人技に
プロ野球選手も太鼓判!
阪神をはじめ、名だたるプロ野球選手が足繁く通うことで知られる広島焼きの店。10年ほど前、店主・中原秀樹さんと親交の深いさる球団のコーチが店を訪ね、スポーツ紙の記者に紹介したことで人気に火がついた。ドラフト当日、指名候補の父親が連れ立って来店し、我が子の門出を喜び合ったこともあるというから、その影響力は計り知れない。地域ごとに特色のある広島焼きのなかでも、店では一銭洋食風の三原焼きを提供。熟練の火加減でふんわり仕上がった逸品をフルーティなソースで味わえば、広く愛される理由がわかるに違いない。
03楽emon...
- 尼崎市南武庫之荘1-22-22
- 06-6438-6300
- 10:00〜14:00
- (売り切れ次第終了)
- 日曜休
「ミュージシャンに例えれば、最初から自作曲をやるタイプ」
「この業態なら武庫之荘と確信していた」と語る夫に、妻の恵さんは「好きなことをしてほしい」と心強い。
和洋それぞれが引き立て合う
自由な発想のお菓子をどうぞ
「もし外国人が和菓子屋をつくったら」を掲げ、和洋が融合した創作性の高いお菓子を生み出す行列店。店主の坂井博一さんは市内の和菓子店に生まれるも、長らくパティシエとして活躍。実家での修行を経て独立するにあたり、自らを外国人になぞらえた。季節ごとに商品は変わるが、外せないのはコーヒーのわらびもち生クリームのせ496円。目新しさから地元に浸透せず、閉店を考えていた折に繰り出した起死回生のヒット作は、ゼリーとも違うぷるぷる食感と甘さを抑えた生クリームという異なる要素が、見事な「和洋融合」を果たしている。
04 恵月人形本舗
- 尼崎市上ノ島町2-2-20
- 06-6427-0121
社長就任2年目の田渕龍一さんは弱冠32歳。ものづくりは現場に託し「お風呂で降ってくる」というアイデアをもとに、販売企画のブラッシュアップに余念がない。
少子化をもろともせず躍進!
32歳率いる“IT系人形メーカー”
1967年にフランス人形や博多人形を飾るガラスケースのメーカーとして、現在地に創業。
その後、ケース入りの低単価商品を多数投入して業績を伸ばすも、少子化が叫ばれるようになってからはビジネスモデルの刷新を迫られるようになった。転機となったのは業界に先駆けたネット通販への参入だ。新たな領域の開拓にあたっては、人気武将の兜飾りシリーズに「NINE」と銘打つなど、旧来の慣習にとらわれないブランディングを展開。ネット通販では国内トップシェアに登り詰め、市内に新たな倉庫を開設したというから恐れ入る。
05きもの利久 尼崎本店
- 尼崎市武庫之荘2-21-15
- 0120-529-198
- 10:00〜19:00
- 水曜・木曜休
母の振袖を現代的にアレンジする「ママ振り」、振袖姿で名建築のランウェイを歩く「FURISODEフェスタ関西」の主催など、販売・レンタルにとどまらない施策も。
地元に根差して40年近く、
アップデートを続ける呉服店
きもの利久の歴史は紆余曲折そのものだ。ルーツは社長の杉澤達也さんの祖母が開いた呉服店だが、母の代で一度は閉店。旅館、レストランなどの経営を経て、若くして亡くなった初代の遺志を継ごうと1985年に「先祖返り」し、10年ほど前に杉澤さんが新たに写真館事業を開始した。専属のカメラマンはいずれも着付けができるとあり、写真のクオリティは折り紙つき。家族経営の安心感も手伝い、親子3代の付き合いも少なくない。地元の期待に応えるおもてなしの精神もまた、次代を担う息子の俊也さんへと引き継がれていくことだろう。
06牛たん割烹 和吉
- 尼崎市武庫之荘1-9-11
- 06-6436-1881
- 17:00〜翌0:00(22:30最終入店)
- 水曜休
黒毛和牛のタンを丸ごと仕入れるのは容易ではないが、かつて精肉業者に勤務していた際の人脈をフル活用。凝り性を自認する吉岡さんが納得できるものだけを供する。
しっぽりとした大人の空間で
牛タンの滋味を多彩に味わう
牛たん割烹を冠した店が仙台ではなく、武庫之荘にあろうとは。遠方のファンも多いここ和吉の自慢は、幾度も継ぎ足したスープで仕込むゆでたん1000円。お箸で切れるほどしっとりした肉の滋味を、淡い味付けで際立たせる。刺身、どて煮など牛タンの懐の深さに驚かされる和吉コース5000円もお値打ちだが、店主の吉岡和彦さんは「ゆでたんと日本酒で気軽に楽しむのもおすすめです」。早い時間は予約で埋まることが目立つ一方、20時以降はふらりとのれんをくぐるチャンス。ここで「ご近所カード」を切れるのは大きな特権かも。
街のイメージを味方につけながら、
決して慢心することなく、
技を磨き、挑戦を続ける。
改めて向き合う武庫之荘一帯は、
すてきな 志 にあふれていました。
そんな思いの積み重ねこそが、
街の個性をつくっているのかも。