街の社長
夢を語る
HEART INTERVIEW
07
甘く華やかな
世界の裏側に
実直な職人仕事あり
オリムピア製菓株式会社
代表取締役社長 冨永 淳 氏
あましん サクセスネットクラブ 幹事
家族にとっての転機が老舗を変えるきっかけに
90年に迫ろうかという歴史の積み重ねが、信頼の証だ。高級チョコレートのOEM生産を手がけるオリムピア製菓は、創業以来一貫して業界の黒子に徹し、企業価値を高めてきた。いまでは有名菓子店の定番商品からコンビニスイーツまで幅広い領域をカバー。知らず知らずのうちに同社のチョコレートを口にしていても、なんら不思議はない。
4代目にあたる冨永淳社長は、社長業1年あまりの新人経営者。若いころから会社を継ぐ意志はあったそうだが、思わぬ回り道を経験している。「大学の卒業間近に2代目社長の父が他界しまして。そのまま入社する道も考えたものの『まずは社会経験を』という周囲の声に押され、建築業界での営業職を経て東京の職人のもとで修業を積みました」。その間、会社を率いたのは専業主婦として家族を支えてきた母だった。初めての会社経営は暗中模索。だからこそ、顧客からの難題にも臆せず向き合えた。廉価品が主体のビジネスモデルは、徐々に高級路線へ転換。そこに技を磨いて帰阪した冨永社長の若い感覚が加わった。原料チョコレートはフランス、ベルギー、南米と用途に応じて産地を使い分けるようになり、開発部門も強化した。結果として、商品構成や顧客層は大きく広がりを見せることになった。
"いいもの"を突き詰めより頼られるメーカーへ
業界の勢力図も、トレンドも目まぐるしく移り変わる時代に、オリムピア製菓の「変身」は見事フィットする。手仕事の温かみと合理化が両立した生産体制は評判を呼び、有名パティシエのプロデュース商品も任されるように。厳格な品質管理が必須の大手企業との協業は、ものづくりを一段上のレベルに押し上げた。「背広には滅多に袖を通さない」との言葉通り、経営者自らも作業着に身を包み現場の意識改革をうながした。
一方で変えないこともある。冨永社長は「ぶれずにいいものを作ることが、当社にとって最大の営業活動。メーカーとしての地位をさらに向上させていきたいです」と頼もしい。目指すべきベクトルは、先代以来の「難しいオーダーに対応してこそのオリムピア製菓」という考えが指し示している。甘い香りのなかで語られた青年社長の決意は、決して甘いものではない。
企業情報
オリムピア製菓株式会社
1934年(昭和9)創業。「チョコレートと名の付くものなら、なんでも作る」を信条に、多様化するニーズに応える。福祉施設にチョコレートを寄付する活動を60年以上継続するなど、地域貢献にも積極的。
大阪府摂津市千里丘7-7-18
URL https://www.olympia-seika.jp