HOME街の社長夢を語る尼崎産の魚が支える地域の食とその先の未来
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HEART INTERVIEW
NPO法人武庫川ECO-LABO 理事長 宮本 悦男氏

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尼崎産の魚が
支える地域の食と
その先の未来

NPO法人武庫川ECO-LABO

理事長 宮本 悦男 氏

あましん グリーンプレミアム〈第11回 環境アイデア部門賞〉

釣り人からのお裾分けが 尼崎の海の印象を変える

太公望たちが、立派なクロダイやスズキを次々に回収用の水槽へ投げ込んでいく。武庫川の河口、尼崎市立魚つり公園での一幕だ。
公園の沖合約2キロに浮かぶ海上防波堤・武庫川一文字は、阪神間でも有数の釣り名所。かねて持て余されていた釣果は、丹念な下処理と急速冷凍を経て市内の子ども食堂などへ無償提供されており、「臭みがなくおいしい」と重宝されている。

フィッシュシェアリングと呼ばれるこの活動を手がけるのは、NPO法人武庫川ECO-LABO。理事長の宮本悦男さんは「ムコイチ」行きの渡船会社の3代目だ。
尼崎の海を知り尽くす宮本理事長だが、10年ほど前にある変化を感じ取る。

釣りエサとして採取していた貝が姿を消し、代わりにブリやヒラメなど従来は見られなかった魚が現れるようになったのだ。
「その貝が汚れた水域を好むと聞き、水質環境の改善を知りました」。実は尼崎は、江戸中期に『尼崎産魚』という書物が記されたほど漁業で栄えた土地。近年になって臨海部の工場が物流倉庫に置き換わり、下水処理技術が向上した結果、往時の豊かな海が戻りつつあるとみられる。

「工業都市のイメージからか、尼崎の海のきれいさや魚の味が知られていない。そこを変えたいんです」。宮本理事長は力を込める。

地元に広がる善意の連鎖 環境理解へも着実に前進

魚の回収量は年々増え、現在では常時400食ほどをストック。釣り人も乗り気というから頼もしい。その善意を余さず使うべく、保護猫のエサや肥料への活用も進む。
エサの製造工程では障がい者雇用が生まれ、肥料は地元農家のもとへ。尼崎という地域のなかで、フィッシュシェアリングを核とした好循環が形成されようとしている。
じゅうぶんな成果に思えるが、活動の幅はそれだけに留まらない。もうひとつの重要テーマは、食育や環境学習だ。

自ら魚を釣り、さばき、食べる魚の教室では体験後、子どもが描く魚の絵に変化が生じるという。「切り身しか見たことがないと、最初は空想で描いてしまう。それが本物に接した途端、ぐっとリアルになるんです」。自分が口にするものと向き合えば、それを育む環境のことも見えてくる。格好の教材は、目と鼻の先に広がっている。

企業情報

NPO法人武庫川ECO-LABO

NPO法人武庫川ECO-LABO

釣り人から魚を回収し、子ども食堂や飲食店に提供する取り組み、フィッシュシェアリングを展開。尼崎の海に向けられる負のイメージを払拭しようと、体験教室や出前授業にも積極的な動きを見せている。

兵庫県尼崎市元浜町4-77
URL https://mukogawaeco-labo.com

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