街の社長
夢を語る
HEART INTERVIEW
04
帽子専業メーカー
による環境問題
への答えとは
日本真田帽子株式会社
代表取締役社長 阿部 浩介 氏
あましん グリーンプレミアム〈第11回 SDGs特別賞〉
業界が抱える共通課題が 新素材開発のきっかけに
「真田」という言葉を聞いて、名の知れた戦国武将や俳優以外に具体的なイメージが思い浮かぶ人は、そう多くはないだろう。しかし、今年で創業90年を迎えた帽子メーカー・日本真田帽子は、決して「真田さんの会社」ではない。
ここでいう真田とは、わらや布地をテープ状に加工したもので、英名は「ブレード」。ブレードを編み上げて作られる帽子は「ブレードハット」といい、かねて日本真田帽子が得意にしてきた。麦わら帽子を筆頭に、古くから親しまれてきたブレードだが、このたび「あましん グリーンプレミアム」でSDGs特別賞を受賞した「ナノトリコローレ」は、従来品とはひと味違う。阿部浩介社長は、開発のいきさつをこう明かしてくれた。
「工場がある中国は頻繁に訪ねていましたが、2016年のG20杭州サミット開催時には、政府のイメージ戦略で会場周辺の工場は操業が厳しく制限されました。糸の染色工程で大量の排水を出す我々には、大きな痛手。一時的な措置とはいえ将来の不安もあり、染め以外の方法で環境に優しいブレードを作ろうと決意したのです」。新素材の開発にあたり着目したのが、和紙の糸。「紙製品であれば印刷による色付けも可能ではないか」という、シンプルな発想が出発点だった。
高い機能性に付加価値を 時代の要請が生んだ必然
製品の要となる和紙糸には、王子ファイバーの「かみのいと OJO+(オージョ)」を採用。
成長が早く、吸湿性や強度に優れたマニラ麻を使用していることが、開発思想と合致した。が、サステナブルな素材を用いることは、価格面では弱点ともなる。そこで高付加価値化を図るべく、洗濯にも耐えうるペーパーブレードが目指された。
「何より洗って縮まないこと。糸を強く撚れば収縮は防げますが、風合いが落ちる。その兼ね合いに腐心しました」。
一方の色付けは、仙台の印刷会社と協業。和紙だけに印刷機の調整から苦労の連続だったが、何度も試作を重ねて理想の発色を実現、自社ブランドの素材として2019年、ついに商品化を果たした。
「当社の歴史は、時代のニーズを読んできた歴史。ナノトリコローレも例外ではありません」と阿部社長。環境意識の強まるアジア市場をにらみつつ、国内の意識向上にも寄与したいと意気込んでいる。
企業情報
日本真田帽子株式会社
昭和7年(1932)創業の老舗帽子メーカー。国内にわずかに残る織り機で伝統の技術を伝えるかたわらで、ナノトリコローレの開発で特許を取得するなど、時代に即した柔軟なものづくりに取り組んでいる。
兵庫県神戸市中央区御幸通4-1-12
URL https://www.jbh.co.jp