街の社長
夢を語る
HEART INTERVIEW
02
商人魂が生んだエコで
おいしい「凍結食品」
塚口商店街振興組合
副理事長 里村 文崇 氏
理事長 村上 憲司 氏
あましん グリーンプレミアム〈第11回 最優秀賞〉
コロナ対応から生まれた商店街生まれの凍結食品
商店街発の凍結食品が、おいしいらしい。意外な商品開発の舞台となったのは、阪急塚口駅の目と鼻の先に位置する塚口商店街。
コロナ禍が長引き、小さな商店街も変化を余儀なくされていた。テイクアウトやデリバリーは、もちろん試した。その上で、ローカルな凍結食品ブランドの開発に至った経緯を、組合の副理事長でプロジェクトの旗振り役を務めた里村文崇さんは、このように振り返る。
「集客は見込めなくても、各店とも食材は確保しないといけない。とはいえ、仕入れ量は読めないので、店舗経営上の大きなリスクが生まれてしまいます。そこで、テイクアウトからもう1段階進めようと。組合員の松葉寿司さんが、冷凍寿司を商品化していたことに着想を得ました」。
そうと決まれば話は早いのが、塚口商店街だ。
里村さんらの呼びかけに応じて、居酒屋、食堂など5つの店舗が手を挙げた。一方で松葉寿司は、高価な急速凍結機を快く貸し出した。
百貨店の催事に並ぶほど、品質に優れた冷凍寿司を世に出した老舗の助言を受け、店主たちは凍らせることを前提に置いたレシピづくりに奔走。風味や食感を左右する解凍方法についても、会員同士で試食を重ねて、納得いくまで検討した。保健所など各種検査機関の認証を受け、2021年1月に始まった商品開発は、9月には一般発売という形で結実した。
商売人たちの集合知は環境問題にも働きかける
ハンバーグ、スパイスカレー、意外なところではステーキ重。「塚口凍結食品」と銘打たれた商品群は「好きなときにお店の味が楽しめる」「冷凍とは思えない」と、購入者の評判も上々だ。店舗で供されるそれと、遜色のない味わいを実現できた理由は、塚口商店街ならではの風土にあると理事長の村上憲司さんは語る。
「会員が自由にアイデアを持ち寄り、意見を交わす。凍結食品もそんなやりとりが出発点でした。根っからの商売人ばかりなので、店の発展のためには妥協しないし、周囲への協力も惜しまない」。コロナ禍という難局に立ち向かう商売人の結束は、フードロス削減という成果ももたらした。その結果、環境問題の改善に向けた地域の取り組みを表彰する「あましん グリーンプレミアム」では、最優秀賞に輝いた。
次なる課題は認知度の向上、そして飲食店以外への効果波及だ。「行動派」の商店街がどんな一手を繰り出すか、注目したい。
企業情報
塚口商店街振興組合
阪急塚口駅から徒歩5分圏内に、30店ほどが軒を連ねる。
イベントの開催、情報誌の発行など、結束力の強さを活かした街づくりを展開。いつも笑顔にあふれる店主らの人柄から「塚口笑店街」を名乗る。
兵庫県尼崎市塚口本町1-16 -15
URL https://tsukaguchi-s.com