街の社長
夢を語る
HEART INTERVIEW

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環境視点で
印刷を捉え、
これからの価値を創造
株式会社研文社
代表取締役社長 網野 勝彦 氏
あましん グリーンプレミアム〈第14回 環境活動部門賞〉
業界に先駆けた環境施策で 紙の未来を切り拓く
環境に配慮した印刷技術を磨き、業界におけるカーボンニュートラルへの取り組みをリードするのは、尼崎の臨海部に生産拠点を置く研文社だ。自動車メーカーの販促ツールに代表されるカタログやポスターといった商業印刷をメインに、発展を遂げてきた同社。2002年にISO14001を取得すると、二酸化炭素を排出しない電源への切り替え、一つひとつの印刷物ごとにどれだけの二酸化炭素が排出されているかを算定する技術の開発を通して、徹底した脱炭素化に舵を切った。
いまや研文社の工場は、東京の本社工場、埼玉工場を含め、そのすべてが再生エネルギーを利用したカーボンゼロプリント工場となっている。一連の挑戦に打って出た当時は、まだまだ製造業において脱炭素への意識が充分行き届いていなかった時代。期せずして環境に優しいものづくりが求められる令和の世を先取りしていた格好だが、網野勝彦社長は省エネや創エネの強化を図るなど、手綱を緩めるつもりはない。先駆的な施策は公的にも評価され、2023年には尼崎工場が日本印刷産業連合会の印刷産業環境優良工場表彰制度で、最高位にあたる「経済産業大臣賞」を受賞した。こうした姿勢を貫ける背景には、コミュニケーションツールとしての紙が持つ可能性を信じる強い思いがあった。
紙というメディアに秘められた 可能性を信じて
「デジタル全盛の世の中とはいえ、モノとして所有できる喜びや手触りは紙というメディアの変わらない特性だと思うんです」。網野社長に紙の魅力を改めて聞いてみると、こんな答えが返ってきた。かつてのような大量消費、効率最優先の時代がとうに過ぎたことで、一つの媒体が持ちうる影響力はそのぶん増したともいえる。一方では、費用対効果が大きな課題として浮かび上がりもした。環境配慮という付加価値を求める顧客のニーズに応じ、カーボンニュートラルはもちろんインクや紙の使用量削減を図る。それと並行して、印刷品質やデザイン性を高める努力も惜しまない。研文社の経営指針は、あくまで両にらみだ。紙離れが叫ばれて久しい現代にあって、その文化を絶やさぬようコツコツと技と心を研ぎ澄ませる―その先に見えてくるのは、デジタルでは決して成し得ない豊かで新しいコミュニケーションのありように違いない。
企業情報

株式会社研文社
1946年(昭和21)創業の総合印刷メーカー。日本を代表する大手企業を相手に、印刷はもとよりデジタル分野まで幅広いソリューションを用意し、顧客のニーズに応えるとともに、環境保全においても業界に先んじた取り組みを見せる。
尼崎市大浜町2-28-10
(尼崎工場・西日本制作部門)
URL http://www.kenbunsya.jp

