街の社長
夢を語る
HEART INTERVIEW

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弁護士社長、
土木・建築を
次のステップへ
株式会社鍵田組
代表取締役 鍵田 佳成 氏
あましん サクセスネットクラブ 副会長
弁護士から家業の継承へ 慣例にとらわれず前進
弱冠34歳にして老舗建設会社の経営を託されたのは、なんと現役の弁護士だ。尼崎の地で90年をゆうに超える歴史を重ねる鍵田組。土木・建築の両面で、創業以来の大口顧客である関西電力グループの操業を支える会社はいま、大きな変革の時期を迎えている。その先頭に立つのは4代目社長の鍵田佳成氏。社長就任から5年目と日は浅いにもかかわらず、DX推進や徹底した分業制の導入などを通して、ビジネスの効率化に精を出している。法曹界に身を投じた視点から見た家業は「まだまだ改善の余地があるように映った」と鍵田氏。従来であれば現場監督が担い、残業の原因になっていた事務作業を女性の積極登用によりカバーし、一方では建設用3Dプリンタに投資して大幅な工期圧縮を実現するなど、その取り組みはすでに数々の成果として結実している。
かたや鍵田組は、公共工事部門においても高い評価を受ける。2023年には尼崎西宮芦屋港海岸の護岸改修工事での功績が認められ、県から「さわやかな県土づくり賞」を受賞。この現場では、事務から土木のイロハを学んだ女性社員も汗を流した。現在、会社の平均年齢は鍵田氏と同年代の37〜38歳と若い。加えて超過勤務もない職場は、長らく建設業に向けられてきた過酷なイメージを覆そうとしている。
“中興の祖” の背中に学び 新たな鍵田組を形づくる
果断なチャレンジに打って出る鍵田氏だが、先代である父への感謝も忘れていない。バブル崩壊後に建設業界を襲った「冬の時代」を乗り越え、さらには阪神・淡路大震災により寸断された電力インフラの復興に尽くし、顧客の信頼を勝ち得た手腕からは多くのことを吸収したという。「私が入社してからは右肩上がりの状況しか見ていない。能登の地震もあったように何事にも動じることのないよう、先代の備える姿勢を見習いたいですね」。会社は、鍵田氏の在任中に創業100周年の節目を迎えることになるだろう。しかし、それは「曽祖父から築き上げてきた経営体力の証拠に過ぎず、ようやく企業として一人前になること」と、当の本人はあくまで謙虚だ。私たちの生活に欠かせないインフラの安心・安全を守る使命感、そして建設業の間口を広げるというミッションを共有し、鍵田組は常識にしばられることなく次代へと突き進む。
企業情報

株式会社鍵田組
1933年(昭和8)創業。阪神間に拠点を置く総合建設業者として、長年にわたり道路整備、橋梁・護岸工事といった土木分野、建築分野の両面で生活インフラを支える。主な顧客に関西電力グループを抱えており、その社会的使命は大きい。
尼崎市崇徳院2-55
URL https://kagitagumi.com

