HOME街の社長夢を語る“卵の殻”から始まった共感できるものづくり
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HEART INTERVIEW
丸美化成株式会社 代表取締役社長 森 雅幸 氏

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“卵の殻”から始まった
共感できるものづくり

丸美化成株式会社

代表取締役社長 森 雅幸 氏

あましん グリーンプレミアム〈第14回 最優秀賞〉

コロナ禍を機に生まれた 卵殻由来のフォーム剤

接着剤には、人と人とを結びつける効果もあるようだ。尼崎の海岸部に拠点を構え、カーペット、自動車用マット、さらには人工芝といった用途に接着剤を供給するほか、靴のインソールに用いられるクッションフォーム剤を研究・開発するのは森雅幸社長率いる丸美化成。創業半世紀あまりを数える同社はこのほど、産業廃棄物として処理されていた卵殻を利用し、カーペットの製造工程に用いられるフォーム剤に昇華する技術を世に出してみせた。
卵殻配合クッションフォームと名づけられた新顔がラインアップされたきっかけは、コロナ禍によるロックダウン。それまで同等品に使われるとともに輸入頼りだった水酸化アルミニウムの調達が困難になり、逡巡を重ねた末に代替原料として炭酸カルシウムを豊富に含む卵殻に目をつけた。「開発にあたっては、パートナー企業との共創を重視しました」とは、開発担当の森地崇常務取締役。地道な情報収集の末に県内の液卵メーカーの協力を取りつけ、地産地消の形で新製品の開発にこぎつけた。炭酸カルシウム自体は国内で自給できるが、鉱山から掘削するそれが枯渇資源であることに変わりはない。一方で人口あたりの卵の消費量が世界2位でありながら、その殻の8割が廃棄されている ― こうした問題意識も、これまでに類例を見ない環境への開発の背中を押した。

環境と健康を突き詰めて 循環型産業へと貢献

卵殻配合クッションフォームは、単に環境に優しいだけではない。気泡と気泡がつながった連続気泡と呼ばれる構造を有することで、優れた吸音性と通気性に加えてクッション性の面でも効果を発揮。各種敷物の接着剤や靴の中敷用クッション材に配合され、製品の機能性向上に貢献する。
コスト面には課題を残すが、森社長は「時代のニーズを先取りした製品が取り入れられれば、そのぶん取引先の社会における信頼度も変わるはずです。もともと我々は少量多品種を武器とする会社。とことんまで相手に寄り添った技術開発を通して、環境マインドを変えていきたい」と前向きだ。丸美化成が追求するのは、環境と健康というすでに人類が直面している大きなテーマ。接着という営みに端を発した循環の輪がつながれば、さらに同社が標榜する「共感できるものづくり」が大きく広がれば、私たちは少し違った未来を見るのかもしれない。

企業情報

丸美化成株式会社

丸美化成株式会社

1973年(昭和48)設立の業務用接着剤メーカー。カーペット、人工芝などに用いられるフォーム剤、バッキング材に強みを持つ。一方で寝装寝具やアパレルを対象とした抗アレルゲン剤を開発するなど、既存技術の応用にも注力している。

尼崎市東海岸町12-1
URL https://marumikasei.com

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