街の社長
夢を語る
HEART INTERVIEW
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“アマの魚”を余さずに
犬や猫の
おやつに変える
ヘルスプロダクト株式会社
代表取締役 近藤 繭 氏
あましん グリーンプレミアム〈第13回 環境アイデア部門賞〉
地産地消の“スタッフのおやつ”づくりに挑戦
障がい者向けグループホームで「スタッフ」を務めるのは、なんと保護犬や保護猫だ。「利用者の心、犬や猫の命のいずれもを救いたい」と事業に熱を注ぐのは近藤繭社長。学生時代に保護犬のボランティア活動に携わり、のちに看護師資格を取得した経歴を持ち、2019年にグループホーム・ホームわんこを尼崎市内にオープンさせた。このこと自体、福祉の先駆事例として注目に値するが、今回は違った角度から会社を見てみたい。
犬や猫と暮らす以上、彼ら彼女らのおやつをどうするかはおのずと議題に上がる。当初は無添加の市販品で対応していたが、費用が高くつくことがネックだった。ならば自分たちで作ってしまえばいいのでは―素朴な発想が、福祉現場発のペットフードという前例なき挑戦の原点になった。折よく市の地域課に紹介されたのが、NPO法人武庫川ECO-LABOだ。武庫川河口で獲れた魚を釣り人有志から譲り受け、切り身にして近隣のこども食堂や飲食店に提供する活動で「尼崎の魚」の魅力を啓発していた同団体。反面で食肉とは異なり、内臓や皮などの廃棄物が出る点に課題を残していた。両者の利害は一致し、2021年に「尼崎でとれた魚おやつ」の開発がスタート。近藤社長自ら自宅のキッチンで深夜まで包丁を握り、試作を重ねた。
フードロス削減と障がい者雇用の両立を前へ
試作段階では、提供されたクロダイやスズキのアラを焼いたり、すりつぶしたりとさまざまな調理法を試した近藤社長。食感を害する骨を処理しきれないのが懸案だったが、情報収集の末に食品乾燥機と圧力鍋を駆使する現在の製法に落ち着いた。安心・安全を期して味付けは一切行っていないものの「スタッフの反応」も試作品に比べ上々だった。
そうして2023年にジャーキー、チップス、ふりかけなどの一般販売を開始すると、同年10月には就労継続支援B型事業所として、わんにゃんワークスを開設。十数名を数える利用者には適性に応じて加工や梱包といった役割が与えられ、共同生活にハリが出た。近藤社長は「尼崎の森で出た間伐材を使ったおもちゃなども含め『地産地消』を進めたい」と力強い。善意の釣果からフードロスを排し、障がい者に就労の場をもたらす試みは、今後どのような広がりを見せるだろう。
企業情報
ヘルスプロダクト株式会社
2018年設立。保護犬と暮らせる障がい者グループホーム「ホームわんこ」を運営する。関西で初となる取り組みは発展を遂げ、現在は保護猫と共存する「ホームにゃんこ」も。ペットを介した交流を通して利用者の支え合いが生まれている。
尼崎市南武庫之荘7-10-1
URL https://healthproduct.jp