街の社長
夢を語る
HEART INTERVIEW
20
展示会を起点に始める
新しい脱炭素のあり方
株式会社カワグチマック工業
代表取締役社長 川口 徹 氏
あましん グリーンプレミアム〈第13回 環境事業部門賞〉
“その場限り”を変革する、新たなディスプレイ
星の数ほどある企業が、それぞれに磨いた技術やサービスを競う展示会。業界を問わず華々しく執り行われる舞台の裏側では、実は大量の廃棄物が生じている。というのも、展示会場を埋め尽くすブースは木造仮設が主流で、イベントが終了しては廃棄を繰り返す時代の潮流に逆行した状況にあるのだ。そんな課題に正面から向き合うのが、段ボール加工全般を手がけるカワグチマック工業。SDGsという言葉が一般的でなかった15年あまり前、強化段ボールを用いたディスプレイ用品を世に送り出した。設営が容易なことに加え、CO2の排出量は従来品のたった3分の1。役目を終えた什器やパネルは100%再資源化が可能だ。つまりは使えば使うほど、導入企業が増えれば増えるほど環境負荷は低減する。「エコ商材の展示会の実態がエコではない。そんな矛盾も目にしてきました」。そう語るのは川口徹社長。銀行勤務を経て父が創業した会社に入ると、強化段ボール用の裁断機や高機能な印刷機などへの設備投資を指揮した。果敢に足回りを強化する背後では、北欧生まれのリボードと呼ばれる軽量かつ堅牢なボード資材との出会いも。まったく新しいディスプレイ用品は、一連の流れからごく自然に生まれたという。ただし、その認知拡大には多大な苦労を要した。
紙素材が持つポテンシャルで環境問題に答えを
販路を広げるうえで障壁となったのは「紙で大丈夫か」という声だった。しかしそこは段ボールのプロ、素材の特性も熟知したうえで「いずれ必ず求められる」と粘り強く事業を継続した。ディスプレイ用品は受注生産が大半。デザイン担当の社員を筆頭に地道に設計事例を積み重ね、広告代理店や百貨店とのコネクションも築いた。
先のコロナ禍では展示会や催事自体が中止となり先行きが危ぶまれたが、テレワーク用のブース、消毒液スタンド、果てはキャットタワーなどにも技術を応用し、危機を乗り越えた。必死の生き残り策の副産物として、いまやディズニーとの協業も進むが、川口社長は飽き足らない。「展示会場のブースがすべて紙製に置き換われば、年間20万トン規模の脱炭素化が実現できる。これは相当なインパクトです」。その眼差しには、段ボールという素材への確かな自信がこもっているかに見えた。
企業情報
株式会社カワグチマック工業
1969年(昭和44)、包装資材販売と梱包業を担う個人商店として創業。法人化、会社合併を経てヤンマー、ニチユなどを主要取引先に工業向け製品で成長。少量多品種、エコ対応など付加価値型のビジネスで次なるステップアップを狙う。
尼崎市南初島町12-9
URL https://www.kawaguchi-mac.co.jp