街の社長
夢を語る
HEART INTERVIEW
18
農福連携から
生まれる、
新しい近郊農業の姿
Home Base
代表 畠 一希 氏
あましん グリーンプレミアム〈第13回 最優秀賞〉
白菜と枝豆に❝持ち球❞をしぼり、農福連携に邁進
「うちは白菜と枝豆だけ。若手の新規就農者は少量多品種志向が強いですが、品目をしぼった大規模経営という選択肢もあることを示したい」。そう語るのは農協勤務を経て三田市志手原地区で就農したHome Baseの畠一希代表だ。約3ヘクタールもの「秘密基地」では年間50トンの白菜、1.6トンの枝豆を生産。阪神間屈指の収穫量を誇る白菜は、時期によって12もの品種を使い分け、完全な露地栽培とすることで甘みを引き出す。盆地ゆえの寒暖差と酒米生産に適した黒土の土壌は枝豆にも好都合で、本場であり自らの出身地でもある丹波篠山にも引けを取らない品質だという。
独立当初から継続している取り組みが、障がい者の就労の場づくりだ。行政と連携し、市内3事業所から障がい者を受け入れ、収穫物の運搬や分別、梱包といった作業に従事してもらっている。「屋外作業は障がいを持つ人にとっても、生きがいやストレス軽減につながると聞いて」。障がいの程度や特性により任せられる作業は異なるが、そこは事業所のジョブコーチと綿密に話し合うことで、適材適所の人員配置を実現。営農指導員として全国表彰を受けた農協時代とは異なり、当事者として「農」に関わること、そこから協働の輪が広がることへのやりがいを感じる毎日を送っている。
農業を切り口に、人が集まる❝ホームベース❞を
収穫物の「起用法」にも抜かりはない。就農1年目にして三田市の学校給食センターに生産物を供給。いまでは芦屋、西宮、川西と、順調にその規模を拡大させている。「消費地の近くで、多くの農地が確保できるのが三田の強みです。いずれは阪神間の学校給食で提供される白菜のすべてを、三田でまかないたい」。生産品目をしぼり込めば、経営判断量が集約される。作業効率が高まるぶん、自ずとビジョンも明確になるようだ。
Home Baseという屋号からも想起されるように、畠代表は野球経験者。高校時代は強豪校の副主将として、兵庫県大会準優勝の偉業を達成した。「ホームベースは人が集まり、ドラマが起きる場所。農業を通して人と人とをつなぐ拠点をつくりたいんです」。都市近郊の大規模農業をどうリードしていくか。若き農家の挑戦は、まだプレイボールがかかったばかりだ。
企業情報
Home Base
JA兵庫六甲での勤務経験を持つ畠一希代表が、2021年に独立。白菜と枝豆の栽培に特化し、農福連携にも力を注ぐ。近隣の新規就農者への指南役という顔も持ち、将来的な加工品生産や海外流通も視野に持続可能な農業の形を追求する。
兵庫県三田市志手原
MAIL kitsune.1230@outlook.jp