街の社長
夢を語る
HEART INTERVIEW
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竹歯ブラシで拓く、
世界を見据えた
ものづくり
株式会社アヌシ
代表取締役社長 西口 元晴 氏
あましん グリーンプレミアム〈第12回 選考委員会特別賞〉
ヘアケアで培った技術で 徹底した脱プラを実現
「紙ストローの次」を狙える、新たな脱プラスチック商品かもしれない。そんな予感を抱かせる竹歯ブラシで注目を集めるのは、伊丹の住宅街に拠点を置くアヌシだ。同社の売上の9割を占めるのは、ヘアブラシに代表されるヘアケア商品。水濡れによる膨張に強く、毛が抜けにくい利点を持つ竹ハンドルのヘアブラシもかねて扱っていた。ただし木材に比べて薄い竹は合成材への加工が欠かせず、そこにどうしてもコストがかかる。高級品の域を脱せずにいた素材だが、歯ブラシほどの大きさなら「一本物」で生産ができる―そんな目論見から生み出されたのが「人と地球にやさしい竹歯ブラシ」だ。
ハンドルだけではない。毛は植物由来のバイオナイロン、パッケージは紙、果ては封緘用のテープまで紙と、商品を構成するあらゆるプラスチック要素をなくした。長期使用が前提のヘアブラシはハンドルをプラスチックコーティングするのが通例だが、歯ブラシの交換サイクルと竹が持つ抗菌作用に着目し、それすらも排して純度100%の脱プラを実現させた。西口元晴社長は「企画担当の脱プラ、SDGsへの執念は相当なもの。売れる、売れないにかかわらず、これからの社会に求められる商品ができたことは会社の自信にもなりました」と目尻を下げる。
先入観にとらわれない“国際基準”の価値創造を
竹歯ブラシ開発の発端は、取引先であるリゾートホテルとのやりとり。いずれプラスチックごみになるアメニティを地方に持ち込む顧客の葛藤を解消したことで、業務用だった商品の一般発売に踏み切った。西口社長をして「唇に触れる感覚など最初は違和感しかない」という使用感だが、機能面に遜色はない。使い心地がサステナビリティに優先する日本の現状を憂うのは、父の赴任先だった台湾で生まれ育ち、環境先進国の経営者と交流を続けるからこそ。竹歯ブラシに限らず、たとえ割高になろうともエコな選択を貫くスタンスが揺らぐことはない。
ところで「アヌシ」という耳慣れない社名は昔日、創業者である父が訪ねたフランスの湖に由来する。早くから積極的な環境保全が行われてきた景勝地の名を冠するがゆえの矜持もあろう。いずれ社員旅行で同地の土を踏みたいと夢を語る2代目は「国際基準」で前進を続ける。
企業情報
株式会社アヌシ
2000年(平成12)創業のヘアケア、オーラルケア製品メーカー。量販店向けのOEM生産を出発点に事業拡大し、環境配慮型のオリジナル商品を数多く開発。デザイナーの自社雇用に象徴されるように巧みな企画力を武器にする。
兵庫県伊丹市荒牧4-6-21
URL https://annecy.jp/